カスタマーサクセスとは?定義や事例を紹介

カスタマーサクセスは、日本ではまだあまり認知されていません。直訳すると「顧客の成功」となります。今まで主流だったビジネスモデルは「売り切り型」でしたが、「月額課金型」「継続型」といったモデルが増えつつある今の世の中では非常に重要な概念です。本コラムでは、今後重要性が増していくカスタマーサクセスの基本に触れていきます。

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カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは顧客の成功を第一の目的とする活動を指します。

従来の営業活動以上に「顧客との信頼関係」「LTV(顧客生涯価値)」「解約率(チャーンレート)」といったリテンション(既存顧客維持)のための指標が重要視されます。

近年は、SaaS(Software as a Service)モデルといわれるビジネスモデルに、サブスクリプションモデルといわれる定期購入型の課金モデルが組み合わさったビジネスモデルが増えてきました。皆さんがよく使うスマートフォンやiPhoneのアプリケーションも同じモデルです。

従来の売り切り型の商品であればどうやって売るかに注力しますが、SaaSモデルは契約更新をしてもらう必要があります。そのため、前述の指標を駆使して既存顧客の成功に伴走することでサービスへの満足度を高め、利用料金の増額(アップセル)や他部署展開、別のサービスへ展開すること(クロスセル)を狙います。

LTV(Life Time Value)
顧客生涯価値を指す。
顧客が製品を購入してから解約するまでに支払った契約金額の総額のこと。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスは以下の表にある通り、顧客の課題を予見し先回りして課題解決に当たります。これに対して従来のカスタマーサポートは、あくまでも顧客からの課題に対してスピーディかつ正確に応答することが求められます。

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスはカスタマーサポートと違い、収益を生み出すことに責任を持っています。以下2点の収益を主に動かします。

①契約更新またはチャーン(解約)回避

契約者を解約させないことが主業務です。企業によって部署の名称は異なるケースもありますが、データを分析してあらゆる顧客の中に「解約のリスクあり」と判定できる要素があった場合に回避又は軽減する阻止を講じます。

②アップセル・クロスセル

顧客にさらに製品やサービスを買ってもらう行動をとることです。あるサービスを購入してもらった後に、もっと有益で魅力的なオプション提案するアップセルを実施することで、さらなる購買を促します。また、クロスセル(横展開)を実施することで、個人であれば顧客の知り合いや親族、法人であれば別の部署や担当者にも認知を広げることができます。
上記2点によって、顧客であり続けてもらい、もっと製品を買ってもらい、さらにはその製品によって顧客を成功へと導きます。

上図の内容に即すと、データや分析結果から解約が予見される顧客や、アップセルの可能性のある顧客を予測し、こちらから能動的に働きかける。更新率やアップセル率などの成長率を指標として、高い成長率の見込める顧客に時間をつぎ込めば、素晴らしい成果を生み出せます。
また、「どうしたらもっと顧客が喜んでくれるか」を予測できることは、カスタマーサクセスに従事する人にとって必須のスキルといえます。

 

カスタマーサポートの役割

カスタマーサポートは顧客が商品やサービスを購入したあとに、使い方や商品に問題があった際の問い合わせ窓口です。そのため、いかに効率よく的確に応対できるかがポイントです。あくまでも受動的な姿勢にはなりますが、応対の際に収集できた情報が自社サービスの改善や新規商品の開発に活かされることで、顧客満足度や収益に寄与します。
能動的な姿勢のカスタマーサクセスとは異なり、カスタマーサポートは受動的です。
業務は大きく分けて3つの役割に分類されます。

  • ①電話やメール、チャットツール等を駆使した問い合わせ対応
    ②応対履歴をもとにした顧客管理
    ③業務内容のマニュアル化

上記の活動を通して、顧客の抱える問題に迅速に応対し、顧客の声を元に自社サービスを改善し、顧客満足度向上と収益増につなげます。
これらの理由により、カスタマーサポートには、適切に求めるものを汲み取る傾聴力や顧客とのコミュニケーション能力、ドキュメント読解力や理解力といったスキルが必要です。

カスタマーサクセスが重要視されている背景

カスタマーサクセスが注目される背景には、物の価値感が「所有」から「成果・体験」へとシフトチェンジしつつあること、ビジネスモデルの変化が関係しています。

以下の文章は、Amazon.comのジェフベゾスCEOが「2016年 株主の皆様へ」で述べられた言葉です。

”競合優位性、プロダクト優位性、テクノロジー優位性など、ほかにもいろいろ自社事業の強みの考える拠り所を考える選択肢は数多くある。けれど僕の中では『狂ってると言われるレベルで、カスタマーにとって無くてはならない存在になることを考える』事こそが、創業初日から1ミリも揺るがない自信をもって事業展開できる唯一の選択肢なのだ”
出典:弘子ラザヴィ「カスタマーサクセスとは何か」

この通り、デジタルの力を駆使したサブスクリプションモデルが、それなしでは生活が成り立たない域に達しようとしています。

サブスクリプション型ビジネスモデルの台頭

価値観が「所有」から「成果・体験」へとシフトチェンジすることによって対価への支払い方法も変化しています。物の所有をしなくなったことで、月額課金でいつでも解約可能なサブスクリプションモデルが急速に増えています。
サブスクリプションモデルリテンションモデルとは何でしょうか。どちらもその特徴は以下の4点に集約されます。

  • ①利用者が日常的・継続的にそのプロダクトを利用して、モノの所有だけではなく成果に対価を支払う
    ②利用者はいつでも解約することができ、初期費用が少なくて済む
    ③利用者がそれなしでは生活または仕事ができない、使い続けたいと思えるほどにプロダクトが常に最新状態に更新されている
    ④利用者が自分にとって成果を得られるならば、個人情報の提供すら許諾する

Amazonミュージックなどの音楽配信サービスを思い浮かべてみてください。従来だと、CDやレコードを購入して所有することによって音楽を聴くことができましたが、1枚当たりの初期費用もそれなりにかかりました。
その点、新たに登場した音楽配信サービスはスマートフォンなどのデバイスが1つあれば、いつでもアクセスして月額数百円で好きな曲を好きなだけダウンロード可能です。さらに、配信される曲は常に更新されます。また、購入履歴や検索履歴を提供者が取得することを許諾しているため、利用者の行動分析に基づいてパーソナライズされた新たなサービスを配信することも可能です。
従来の売り切り型は、購入したとたんにプロダクトの価値が固定化されますが、サブスクリプションモデルは購入した後もプロダクトの価値は最新・最適化されます。これにより収支モデルの変化を前提に事業計画を立てることが可能となりました。

リテンションモデル
購入後継続して体験やサービスを提供するビジネスモデルのこと。
継続的な利用が前提のため、リテンション率が最重要指標である。

顧客は「ビジネスパートナー」という考え方

価値提供の考え方がLTVを重視する傾向にあることも、カスタマーサクセスの存在を色濃くしています。
従来の売り切り型モデルの場合、プロダクトの利用方法などは利用者に委ねられていました。つまり、利用者はプロダクトを利用することで「どんな体験と成果が得られるのか」を重視していました。その結果、プロダクト提供者は利用者が欲しいと思うものを開発するだけではなく、どのように使ってもらうことでどんな体験や成果が得られるのかアウトプットが必要となりました。そのため、利用しやすいように少額ではじめられるプロダクトを長く使ってもらうことで、顧客がそのプロダクトに支払うお金を最大化することがビジネスの成否の軸となりました。ビジネスパートナーとして「伴走」して顧客を成功に導くことが至上命題となったのです。

カスタマーサクセスに求められる目標・KPI

ビジネスパートナーとして伴走して信頼を得るためにはどんな活動と指標が必要でしょうか。SaaS型のビジネスモデルの特徴も抑えながら確認していきます。

LTVの向上がカスタマーサクセス最大の目標

サブスクリプションモデルは長く使ってもらうことで成り立つビジネスです。
サブスクリプションモデルを展開するSaas企業の収益のほとんどは、買ってもらった後で発生します。初回購入時にのみ、大きなお金が動く従来型の売り切り型と大きく異なり、少額の契約金額を毎月積上げていかなければなりません。

カスタマーサクセスのKPI

カスタマーサクセスの業績評価については以下のような指標が使われます。

総契約更新金額
前年度の更新金額に対してアップセルとなったのか、ダウンセルとなったのかの指標です。いずれにしても、事実に基づいた結果分析を実施してサービスやプロダクト、提案の向上を図ります。

総契約更新件数
カウント対象が企業によって異なります。契約者数、契約社数、契約ライセンス数等が挙げられます。受注単価も対象によって大きく異なります。

ヘルスチェックスコア
契約者がサービスを適切に利用してくれているかを測る指標です。例えば、システムへのログイン頻度、利用頻度、どの機能をよく利用しているかなどを可視化することで先回りして次回提案を実施します。

アップセル / クロスセル
アップセルは企業や個人が今まで以上にサービスやモノをかってくれることを指し、クロスセルは契約企業の別部署で新規取引が開始されること、個人が今までとは違うサービスやモノを買ってくれることを指します。

ネットプロモータスコア
顧客のロイヤリティを測る指標です。顧客が対象となるサービスやブランドにどれくらい愛着を持っているかを数値化します。具体的には、サービスに対して好意的か批判的かアンケートの回答内容を点数化します。このとき、好意的と批判的ステータスの分布割合の差分がプラスなら好意的、マイナスなら批判的と判断します。

オンボーディング完了率
初回契約した顧客やトライアル実施した顧客のうち、どれくらい継続契約をしたのか、またはトライアルから本契約に至ったかの割合を指します。完了率75%だとすると25%は解約してしまったことになります

チャーン(解約率)
特にチャーンはカスタマーサクセスが最も重要視すべき指標です。
仮に毎月のチャーンレートが5%とすると月間で見る分には許容できる数値に思えます。
しかし、これが12ヶ月続くとすると年間で60%の顧客を失うことを意味します。顧客のデータを分析することや日々のケアをすることで未然に防ぐための予測と先回りする力が求められます。

カスタマーサクセスは「顧客の成功」にシフトチェンジすること

カスタマーサクセスとは全社的な取り組みそのものを指し、企業の方向性をプロダクトや売上偏重から「顧客の成功」にシフトチェンジすることを意味します

カスタマーサクセスは避けて通れない

以下要件からカスタマーサクセスは企業が生き残れるかの成否を握っています。

・グローバリゼーションとテクノロジーによって参入障壁が低くなった
ECプラットフォーム運営企業がクラウドサービスを販売するなど、今まで想像もしていなかった業種から参入者が現るためカスタマーサクセスの要素は大変重要です。

・新規参入者が既存の枠組みをすべて壊すことが可能
新規参入者だからこそ既存の常識にとらわれないビジネスモデルを展開する可能性もあります。

・クラウド化により顧客がお試しや短期利用など様々な利用方法を見出している
顧客体験の方法は多様化し、かつ短期間で意思決定する傾向があります。いかにオンボーディング完了するかはカスタマーサクセスの役割が重要です。

・顧客が簡単に解約でき、かつ選択権を得た
モノから体験に対価を求めるため、期待を超えないサービスはすぐに解約してしまいます。

・顧客が成功をもたらしてくれるベンダーを選択する権利を有している
一括請求サイトやマッチングサービスによって従来より顧客の選択肢が広がっています。

・顧客がベンダーに成功を期待する
成功体験を求めているため、成果の出ないサービスは解約の対象となります。

カスタマーサクセスの価値

企業はカスタマーサクセスに取り組むことで、以下のような価値をもたらします。

・成長
成功した顧客が広告塔となって、新たな顧客の呼び水となってくれます。
顧客が顧客を集客してくれるため、営業プロセスは質の良い案件を効率よくかつ高い生産性で提案から受注まで走ることができます。つまり、企業の成長が加速度的に伸びます。反面、チャーンをすると顧客離れが加速する可能性もあるので顧客の行動には細心の注意が必要です。

・評価
カスタマーサクセスがより多くのお金を生み出す取り組みであると市場が認め始めているため、企業の時価総額、株価、ブランディングなどに今後大きく寄与します
特に海外では、サブスクリプションモデルの事業会社の上場が倍増していますカスタマーサクセスと既存顧客維持、アップセル、クロスセルには直接的な相関関係があると評価し始めており、この波はいずれ日本にも波及します。

・差別化
あらゆる企業がカスタマーサクセスに取り組むわけではないので、この取組自体が差別化要素になり得ます。製品やサービスはいつか必ず陳腐化しますその時、顧客の成功体験を導き出せるプロセスや組織を整えておくことがとても重要です。

カスタマーサクセスは何から始めるべきか?

カスタマーサクセスを始めるための何が必要か、以下にまとめます。

・成功を定義する
顧客にとって成功の定義は異なります。顧客と向き合い、顧客を理解することで顧客にとっての成功の意味を具体化しましょう。

・組織として成功の足並みを揃える
カスタマーサクセスは、営業やサポート部門など部署横断することで本来の力を発揮します。全社的にカスタマーサクセスを支援する体制が必要です。

・カスタマーサクセス部門に耳を傾ける
顧客の一番近くにいるのが、カスタマーサクセスです。投資家、従業員からの情報提供も無碍にはできませんが、カスタマーサクセスが顧客からどのような声を拾っているか定期的に全社共有する必要があります。

・カスタマーサクセスを優先する
ここは、カスタマーサクセスの力の差がはっきりと出ます。常に顧客ファーストであり、主語を顧客にすることを貫くことが求められます。

・カスタマーサクセス部門に権限を与える
カスタマーサクセスを支援するために、カスタマーサクセス部門の役職を充実させましょう。特に経営層が顧客の新たな情報を仕入れた際は、一番にカスタマーサクセスへ情報連携しましょう。

・カスタマーサクセスを計測する
前述のKPIを自社にあった形で設計し、営業と同様に活動の評価を正しく実施できるようにしましょう。

・カスタマーサクセスを報告する
活動状況は全社アクセスできる状態を目指し、重要な会議体では営業と同じくらいのウエイトのボリュームを確保しましょう。

・成功を祝う
カスタマーサクセスは容易ではありません。そのため営業と同じくらい成果に対しての報奨や賛辞を全社で取り組みましょう。

上記項目を推進し「
単なる習慣」と化すことが、カスタマーサクセスを成功させるうえで最も重要です。

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Written by...スマタイ編集部

スマタイの記事を制作している編集部です。
不定期でマーケティング、インサイドセールス、営業支援に関する最新の情報を発信していきます。

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